第1章 民主政治の基本原理

5.法の分類

2022年5月 有馬秀次 監修

(1)社会規範

(しゃかいきはん)

社会規範

社会規範とは、社会集団の秩序を維持し、社会生活を円滑に行うための決まりや法則のことです。、道徳、慣習、伝統、風習、宗教などがあります。
【法】
とは、社会の秩序を維持するために、国や議会などの組織が、その政治権力によって強制する決まりのことです。
法は社会規範の一種で、人間の外面性(行為や態度)に対する規範です。社会の秩序を乱すような行動には、強制的に法が適用されます。
法にはさまざまな区分がありますが、大きく、自然法実定法に分けられます。
【道徳】
道徳とは、人々が物事の善悪を良心に沿って判断するための基準のことです。
道徳は社会規範の一種で、人間の内面性(思想や良心)に対する規範です。人が自発的に守るもので、国家による強制はありません。
【慣習】
慣習とは、一定の社会や集団において、多くの人々によって受け継がれてきた行動様式のことです。
慣習は社会規範の一種で、多くの人々に共有される習わし(習慣や風習など)です。これに反すると、社会的制裁(村八分など)を受けることもあります。

(2)自然法

(しぜんほう)

自然法

自然法とは、人間の本性(生まれながらの性質)に存在する普遍的な法のことです。
普遍的とは、「あらゆる時代の、すべてのものや人に当てはまるさま」という意味です。
【実定法との違い】  
自然法は、実定法に対する用語として位置づけられています。
自然法は、時代や民族に関わらず、すべての人に通用する法です。
対して、実定法は、人為的につくられた、一定の国や社会、一定の時代にのみ通用する法です。
【自然法思想】  
自然法は普遍的に正しい規範であり、これをもとに実定法が存在する、という考えを自然法思想といいます。
自然法思想は、オランダの法学者フーゴ・グロティウス(Hugo Grotius、1583-1645)、イギリスの哲学者トマス・ホッブズ(Thomas Hobbes、1588-1679)、イギリスの哲学者ジョン・ロック(John Locke、1632-1704)、フランスの思想家ジャン=ジャック・ルソー(Jean-Jacques Rousseau、1712-1778)らが提唱しました。グロティウスは、「自然法の父」と呼ばれています。
一方、自然法を否定する考えもあります。

(3)実定法

(じっていほう)

実定法

実定法とは、人為的につくられた法のことです。
人為的とは、「自然の状態に、人の手が加わるさま」という意味です。
国や社会において制定され、一定の時代に通用する実効性があります。
【自然法との違い】  
実定法は、自然法に対する用語として位置づけられています。
実定法は、人為的につくられた、一定の国や社会、一定の時代にのみ通用する法です。
対して、自然法は、時代や民族に関わらず、すべての人に通用する法です。
【法実証主義】  
自然法を否定し、実定法のみを法と認める、という考えもあります。これを法実証主義(ほうじっしょうしゅぎ)といいます。
法実証主義は、イギリスの法学者ジョン・オースティン(John Austin、1790-1859)、オーストリアの法学者ハンス・ケルゼン(Hans Kelsen、1881-1973)らが提唱しました。
【実定法の分類】 
実定法は、文書化された法である成文法と、文書化されない法である不文法に分けられます。

(4)成文法

(せいぶんほう)

成文法

成文法とは、文書化された法のことです。立法機関(国会)で制定される法であることから、制定法ともいいます。
成文法には、公法、私法、社会法があります。
公法とは、国家と国民(民間人)との関係における法のことです。日本国憲法、行政法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法などがあります。
私法とは、民間人と民間人との関係における法のことです。民法、商法、会社法などがあります。
社会法とは、個人主義・自由主義に基づく近代の市民法を修正し、公共的利益を優先するという思想を基礎とする法のことです。労働法、経済法、社会保障法などがあります。
【成文法主義】
成文法主義とは、成文法を重要と捉え、国法の基礎とする考え方のことです。制定法主義ともいいます。
ヨーロッパ大陸の国々や日本などは、成文法主義を採用しています。
これを米英法に対して、大陸法とかシビル・ロー(civil law)とも呼んでいます。
【日本初の成文法】
日本で最初の成文法は、推古12(604)年に聖徳太子が制定した「十七条憲法」です。ちなみに、古代ギリシアのアテナイでは、最古の成文法とされる「ドラコンの立法」が、立法家ドラコン(生没年不詳)によって前621年に制定されました。

(5)不文法

(ふぶんほう)

不文法

不文法とは、文書化されない法のことです。
不文法の代表的なものに、慣習法と判例法があります。
慣習法とは、長期にわたって社会に浸透した慣習(掟、習わし、しきたりなど)に基づいて、成立した法規範のことです。
判例法とは、過去に裁判所が下した判断の実例を基準として、事実上の拘束力と捉える法規範のことです。
【不文法主義】
不文法主義とは、不文法(判例法)を重要と捉え、国法の基礎とする考え方のことです。判例法主義ともいいます。
イギリス、アメリカなどは、不文法主義を採用しています。
これを大陸法に対して、米英法とかコモン・ロー(common law)とも呼んでいます。
※コモン・ローという用語にはいくつかの捉え方がありますが、古くはイギリスの中世初期において、一般的慣習法(国王裁判所が運用した法)という意味で用いられています。

(6)確認問題

問題1
社会集団の秩序を維持し、社会生活を円滑に行うための決まりや法則のことを(①社会規範、②経済)という。

①社会規範

問題2
「自然法の父」と呼ばれているのは(①アダム・スミス、②グロティウス)である。

②グロティウス

問題3
自然法を否定し、実定法のみを法と認める、という考えを(①自然法思想、②法実証主義)という。

②法実証主義

問題4
成文法主義のことを大陸法とか(①シビル・ロー、②コモン・ロー)という。

①シビル・ロー

問題5
不文法の代表的なものに、慣習法と(①社会法、②判例法)がある。

②判例法

 

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