金融大学(金融大学講座)

株式取引入門講座 第9回 転換社債

1.転換社債とは何か

 

転換社債は、株式に転換する権利が付いた社債です。英語でコンバーティブルボンド(Convertible Bond)、略してCB(シービー)といいます。

 

転換社債は、転換権を行使すると社債がなくなって、株式に変わります。転換社債は、株が値上がりすると株式に転換されますが、株が値上がりしない場合には、社債として保有して利子を受取ることができます。つまり、株式が値下がりしても社債としての価値があるため、転換社債は一定水準より値下がりすることはありません。

 

転換社債

 

転換社債を100円以下の値段で購入できれば、元本保証の保険つき株式と見ることができます。いったん株式へ転換すると再び社債には戻せません。

 

 

 

2.転換社債の売買単位

 

転換社債には、最低取引単位として10万円、50万円、100万円の3種類の券種が使われています。

 

転換社債の価格の表示は、債券と同様に100円あたりで表示されます。100万円券の銘柄を購入するのに、転換社債の価格が100円であれば、100万円が必要です。価格が120円ならば、120万円が必要となります。

 

転換社債

 

転換社債の発行時の価格は100円です。満期日までの間、値上がりして170円になったり、値下がりして80円になったりしますが、満期日には100円となります。株価が上がっていくと転換社債の価格も100円を超えて上がっていきますが、満期日には100円で返済されます。

 

 

 

3.転換価格

 

転換社債を株式に交換する場合の価格を、転換価格といいます。転換価格1万円、額面100万円の転換社債の場合、100株の株式に転換できることを示します。

 

転換価格を決める基準には、株式の時価を基準にする時価転換の方法が使われています。ここでいう時価は、株式を転換するときの時価ではなく、転換社債の発行(募集)時より少し前の一定日または数日間の平均株価を基準にしています。

 

通常、転換価格は、募集日前6取引日の終値平均を基準に、これを数%上回るところに決められます。例えば、転換社債の募集日前の終値平均株価が1000円であるとすると、5%上乗せした1050円を転換価格とするわけです。

 

10万円の社債で、時価480円を基準とした転換価格が500円であった場合、200株(100000÷500=200)の株式に転換できます。

 

額面転換について

 

額面転換とは、株式の額面を基準に転換価格を決めることです。額面転換では、10万円の社債で額面50円の場合、2000株(100000÷50=2000)の株式に転換できます。しかし、現在では、額面転換の方法は使われていません。国内公募発行分はすべて時価転換社債となっています。

 

 

 

4.理論価格(パリティ)

 

転換社債の価値を、株式の時価から社債の基準に見直したものをパリティ価格と呼んでいます。転換価格を100としたときの株式の時価がいくらになるかを計算したものです。転換社債の価格の水準を理論的に表しています。

 

購入した転換社債をそのまま保有するのか、処分して利益を確保するのかを判断する目安に理論価格(パリティ)が利用できます。パリティは、現在の株価(時価)を転換価格で割って算出します。

 

転換社債

 

時価が転換価格と一致するとき、パリティは100円で額面価格と同じです。

 

転換社債の発行時点では、転換価格(例えば10000円)は、株式の時価(例えば9000円)より高く設定されますから、理論価格(9000÷10000×100=90円)は、100円を下回っていることになります。

 

株価が上昇して転換価格を上回れば理論価格は100円を超え、逆に株価が下がれば理論価格も下がります。

 

パリティ価格が100円を上回ると、転換社債を処分して利益を確保できます。ただし、実際は、証券会社への手数料や税金がかかるので、数円以上値上がりしていることが必要です。

 

一方、パリティ価格が100円を下回っている時には、転換社債のまま保有することになります。

 

 

 

5.かい離率

 

転換社債の時価と、パリティの離れ具合の割合を示したものをかい離率といいます。購入した転換社債を処分する方法として、転換社債としてそのまま売却する方法と、株式に転換して株式として売却する方法があります。どちらが得かを比べるのにかい離率を利用します。

 

転換社債

 

株価が1200円の時に転換価格が1000円であれば、理論価格は120円(1200÷1000×100)となります。この時、転換社債の時価が120円であれば、かい離率は0%となります。

 

時価が132円であれば、かい離率は10%で、理論価格より10%高い水準で取引されていることになります。かい離率が大きいほど、株価に対する割高度が大きいことを示します。逆に、時価が108円ならば、かい離率は、マイナス10%となります。

 

かい離率がマイナスになっているときを逆かい離といいます。逆かい離は、転換社債が株式より割安になっていることを示します。逆かい離ならば、転換社債を買って株式に転換して売却すると利益が得られます。

 

例えば、転換社債を108万円(100円に付き108円)で買うと、理論価格120万円(100円に付き120円)相当の株式に転換できることを示します。株式を売却すると12万円の儲けになります。逆かい離ならば、株式に転換して売却することで利益が得られます。

 

実際には、転換請求をして株式が手に入るまでに10日間ほど時間がかかるので、注意が必要です。その間に株価が下落してしまうと、理論価格で売れなくなるからです。

 

転換社債

 

保有する転換社債を処分する場合、かい離がプラスの場合には、転換社債のまま売却します。逆かい離の場合には、株式に転換して売却した方が有利になります。

 

 

 

6.転換社債の利回り

 

転換社債の利回りは、投資した金額に対して受取る収入の割合を1年あたりで計算したものです。

 

年利息と転換社債の購入価格の割合をみるものを、直接利回りといいます。 短期間CBを所有する場合の利回りの尺度として使います。

 

直接利回り(%)=年利息÷CB購入価格×100

 

CBを償還日まで保有する場合の、1年あたりの償還差益を年利息に加味した割合を最終利回りといいます。

 

最終利回りは、転換社債を長期に保有する場合の利回りに使われます。

 

最終利回り(%)
   ={年利息+(額面-CB購入価格)÷満期日までの年数}÷CB購入価格

 

 

 

7.転換社債の利点

 

CBは、社債としての元本・利息収入の確実性と、株式の値上がりによる収益性を兼ね備えた商品です。

 

転換社債を購入者からみると、社債としての利子を受取ることや、株価が上がったときには株式に転換してキャピタルゲイン(売却益)を得られるという楽しみがあります。

 

一方、企業側からみると、社債のクーポン利率を普通社債より低くして発行することができるため、低コストの借り入れ手段となります。業績が順調であれば、株価が上がって株式へ転換されるので、社債を返済する必要がなくなります。株式増資に比べて、配当負担が1度に増加しないのも魅力です。

 

 

 

8.転換社債売買の注意点

 

転換請求後、株券が手元に届くまでに1~2週間かかります。その間に株価が値下がりすると損をしてしまいます。信用銘柄の株式の場合には、信用取引で売っておく方法が採られます。

 

もう1つの注意点は、抽選償還や繰り上げ償還などの途中償還です。

 

抽選償還は、投資家がなかなか株式転換をしてくれない場合に、転換社債の発行残高を減らす目的で、社債券の番号に抽選で当たった人に額面100円で償還されます。

 

償還は額面100円で行われるので、転換社債を100円以下で購入している場合には償還益が得られますが、100円以上で購入している場合には損をしてしまいます。転換社債を200円で買った人は、100円の償還損(200-100=100)を被ることになります。

 

繰り上げ償還は、利子負担を減らしたいという発行会社の都合で行う、任意の償還です。プレミアムをつけて額面より少し高く買い入れてくれます。

 

転換社債の価格は、満期日には100円となります。100円を大きく上回る価格で買った場合、満期日には100円で返済されてしまいます。200円で買った人は、100円(200-100=100)損をすることになります。満期日が近づくにつれて、転換社債の価格は、100円に近づいていきます。

 

100円を上回る転換社債を保有して保有している場合には、株式への転換を忘れないようにしておくことが重要です。株式の価格は1つの企業に1つしかありませんが、転換社債の価格は発行時期の違いにより数個の時価があります。第何回発行のものかを確認しておくことも重要です。

 

転換社債への投資は、途中償還のリスクと残存期間を考慮して、市場価格と理論価格のかい離率の低いものを選択することもポイントの1つです。

 

 

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まとめ

転換社債
  株式に転換する権利が付いた社債
転換価格
  転換社債と株式を交換する場合の価格
理論価格(パリティ)
  転換価格を100としたときの株式の時価
  現在の株価(時価)÷転換価格
かい離率
  転換社債の時価とパリティの離れ具合の割合
転換社債の利回り
  投資金額に対して受取収入の1年あたりの割合
直接利回り
  年利息と転換社債の購入価格の割合
  年利息÷CB購入価格×100
最終利回り
  CBを償還日まで保有する場合の、1年あたりの償還差益を年利息に加味した割合
  {年利息+(額面-CB購入価格)÷満期日までの年数}÷CB購入価格

 

 

問題と解答
  1. 転換社債は、株式に転換する権利が付いた社債です。転換権を行使すると●●に変わります。株が値上がりしない場合には、●●として保有して利子を受取ることができます。
  2. (答え)株式、社債

  3. 転換社債には、最低取引単位として10万円、●●万円、100万円の3種類の券種が使われています。満期日までの間、値上がりしたり値下がりしたりしますが、満期日には●●●円で返済されます。
  4. (答え)50、100

  5. 転換社債と株式を交換する場合の価格を●●価格といいます。転換価格を決める基準には、株式の時価を基準にする●●転換の方法が使われています。
  6. (答え)転換、時価

  7. 転換社債を、そのまま保有するのか、処分して利益を確保するのかを判断する目安に理論価格(●●ティ)を利用します。パリティは、現在の株価(時価)を●●価格で割って算出します。
  8. (答え)パリ、転換

  9. 転換社債の時価とパリティの離れ具合の割合を●●●率といいます。かい離率がマイナスの場合を●●●離といい、転換社債が株式より割安になっていることを示します。
  10. (答え)かい離、逆かい

  11. 転換社債の利回りは、投資した金額に対して受取る収入の1年あたりの割合です。●●利回りは、年利息と転換社債の●●価格の割合をみるもので、短期間CBを所有する場合の利回りの尺度です。
  12. (答え)直接、購入

  13. ●●利回りは、CBを償還日まで保有する場合の、1年あたりの償還差益を年利息に加味した割合です。●●社債を長期に保有する場合の利回りに使われます。
  14. (答え)最終、転換

  15. 購入者側の利点は、社債としての利子を受取ることや、株価が上がったときに、●●に転換してキャピタルゲイン(売却益)を得られることです。企業側の利点は、クーポン利率を低くして発行できることや、株価が上がって、●●に転換されると社債を返済する必要がなくなることです。
  16. (答え)株式、株式

  17. ●●請求後、株券が手元に届くまでに1~2週間かかります。その間に株価が値下がりすると損をしてしまうので、信用●●の株式の場合、信用取引で売っておく方法が採られます。
  18. (答え)転換、銘柄

  19. ●●償還は、転換社債の発行残高を減らす目的で、社債券の番号に抽選で当たった人に額面100円で償還されます。●●●●償還は、利子負担を減らしたいという発行会社の都合で行う任意の償還で、プレミアムをつけて額面より少し高く買い入れます。
  20. (答え)抽選、繰り上げ

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