貨幣乗数(かへいじょうすう)
money multiplier(マネー・マルチプライヤ)

貨幣乗数

貨幣乗数とは、マネーストックがハイパワードマネーの何倍になるかを表した数字で、信用乗数ともいいます。

 

≪貨幣乗数の計算≫

 

貨幣乗数を求めるには、2つの計算公式があります。

 

◆貨幣乗数の公式(1)

 

貨幣乗数は、マネーストックをハイパワードマネーで割って求めます。

 

たとえば、10兆円のハイパワードマネーが100兆円のマネーストックを生み出すとき、貨幣乗数は10(100/10=10)となります。

 

貨幣乗数

 

※マネーストックは、現金通貨と預金通貨の合計です。一方、ハイパワードマネーは、現金通貨と法定準備預金の合計です。

 

ここで、ハイパワードマネーをH、マネーストックをMs、現金通貨をC、法定準備預金をR、預金通貨をDとして上記の式を書き直すと、次のようになります。

 

貨幣乗数

 

この計算式の両辺にハイパワードマネー(H)を掛けると、マネーストック(Ms)が求められます。

 

貨幣乗数

 

たとえば、法定準備率(R/D)が1%、現金預金比率(C/D)が10%である時に、ハイパワードマネー(H)が2兆円増加すると、マネーストックは20兆円増えることがわかります。この時、貨幣乗数は10となります。

 

貨幣乗数

 

※現金預金比率をゼロと仮定すると、マネーストック=1÷法定準備率×ハイパワードマネーの簡易式で計算することができます。

 

ここで、現金預金比率(C/D)をα(アルファ)、法定準備率(R/D)をβ(ベータ)とおくと、次のようになります。

 

貨幣乗数

 

◆貨幣乗数の公式(2)

 

貨幣乗数は、預金歩留まり率(μ:ミュー)と法定準備率(β)の数値から計算することもできます。

 

貨幣乗数=1/(1-μ+μβ)

 

預金歩留まり率が大きいほど、預金の金額が大きくなるため、貨幣乗数は大きくなります。逆に、預金歩留まり率が小さいほど、預金の金額が小さくなるため、貨幣乗数は小さくなります。

 

また、法定準備率が小さいほど、貸し出しにまわせる金額が大きくなるため、貨幣乗数は大きくなります。逆に、法定準備率が大きいほど、貸し出しにまわせる金額が少なくなるため、貨幣乗数は小さくなります。

 

※貨幣乗数の計算式は、0<μ<1、0<β<1 の条件のもとで成り立ちます。

 

≪現金預金比率(α)と預金歩留まり率(μ)の関係≫

 

現金預金比率(α)と預金歩留まり率(μ)には、次のような関係があります。

 

現金預金比率: C/D=α(1-μ)/μ

 

預金歩留まり率: D/(C+D)=μ1/(α+β)

 

≪マネーストックの管理≫

 

貨幣乗数が一定の値に安定している場合には、マネタリーベースを使って、マネーストックを管理することができます。しかし、現金預金比率(C/D)が変動すると、貨幣乗数も変わります。

 

貨幣乗数は、民間主体の経済活動に大きく依存します。金利が上がると、お金を現金で保有しないで預金で保有しようと考える人が増えるため、現金預金比率(C/D)は下がり、貨幣乗数は大きくなります。逆に、金利が下がると、お金を預金で保有しないで現金で保有しようと考える人が増えるため、現金預金比率(C/D)は上がり、貨幣乗数は小さくなります。これは、金融政策の効果を減殺することを示しています。

 

マネタリーベース残高の多くは現金通貨(日銀券と補助貨幣)で占められています。そのため、民間(個人、法人)の現金需要が貨幣乗数に大きく影響することになります。日本銀行が法定準備率(R/D)を変更してマネタリーベースを変えても、貨幣乗数が不安定であると、日本銀行によるマネーストックの管理はむずかしくなります。

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