金庫株(きんこかぶ)
treasury stock(トレジャリー・ストック)

金庫株

企業が自社の株式を買い戻して、手元に置くこと

 

金庫株とは、企業が自社の株式を買い戻して、手元に置くことをいいます。株券を手元の金庫にしまっておくところから、「金庫株」と呼ばれています。

 

≪改正前≫

 

従来の制度では、ストックオプション(会社の役員や従業員が、あらかじめ決められた価格で自社株を購入できる権利)に使用するときや、発行済株式数を減少させる目的で株式取得後に消却するときなど、限られた場合だけに自社株の取得が認められていました。
また、保有に関しても、ストックオプションを目的として取得した場合は6ヶ月以内に使用人(役員や従業員)に譲渡しなければならない、消却目的の場合は速やかにその手続きをしなければならないなどの規制がありました。

 

≪金庫株の解禁≫

 

2001(平成13)年10月1日、商法改正が施行され、金庫株が解禁となりました。これにより、企業は目的を問わずに、自社株を取得・保有できるようになりました。
自社株取得は、株主総会の決議に基づいて行われます。取得した株式には処分規制がないため、期間・数量の制限を受けずに保有することができます。金庫株の処分(売却)については、2002(平成14)年3月31日まで禁止されました。ただし、ストックオプションと代用自己株に利用することはできます。代用自己株とは、会社分割、合併、株式交換に伴う新株発行を行わず、かわりに保有している自己株式を移転することをいいます。

 

金庫株

 

◆金庫株の効果

 

金庫株には、持ち合い株の受け皿としての効果があります。持ち合い株とは、取引関係にある企業同士が、お互いに保有しあっている株式のことをいいます。持ち合い株は、株主を安定化し、企業買収から回避するために行われてきました。
しかし、バブル崩壊後は、企業の経営悪化や銀行の不良債権処理などから、持ち合い株を売却する動きがでています。これを、「持ち合い株の解消売り」といいます。持ち合い株の解消売りは、株価下落の要因になり、また、企業は乗っ取りの対象になりやすくなります。

 

金庫株は、企業が、市場に放出された自社の株式を購入することにより、乗っ取りから会社を防衛しようとするものです。また、自社の株価が下がらないように下支えしたり、将来の株式配当を減らす効果もあります。

 

余剰資金のある企業では、自社株取得による資産運用が積極的に行われています。
全国上場企業(新興市場を除く)が発表した、2001年4月~2002年1月末の自社株取得予定総数(上限)は14億4391万株で、過去最高となりました(日本経済新聞社の集計より)。

 

◆金庫株の問題点

 

自社の株式を保有できるようになると、不正が行われる可能性があります。意図的に株価をつりあげたり、インサイダー取引を行ったりする違法行為です。インサイダー取引とは、大株主や役員などの内部関係者が、未公開情報をもとに株式の売買を行うことをいいます。

 

自社の株式を取得するにはお金が必要であるため、資金の少ない企業にとっては利用しにくい制度といえます。

スポンサーリンク
 このエントリーをはてなブックマークに追加 

トップへ戻る