金融大学(金融大学講座)

金融取引入門講座 第5回 決済機構

1.内国為替

 

個人や企業が、物やサービスを購入する際に代金払いに使うのは現金だけではありません。企業間の支払いは、通常、小切手や手形などを使用し、送金や取立ては内国為替を利用して行われます。

 

小切手や手形は、企業の当座預金勘定からの支払いを銀行に指図する書面です。決済は、企業の当座預金口座から行われます。

 

内国為替は、銀行間の口座振替を使って送金や取立てを行う方法です。決済は、銀行の預金口座の振替で行われます。つまり、現金に代わって預金通貨で支払いがなされています。

 

決済機構

 

個人や企業から銀行に持ち込まれた取引は、いったん、民間銀行間に取引が集中され、お互いの受払い金額を相殺します。そして、その差額は、日銀にある各民間銀行の口座振替で最終決済されます。

 

民間銀行による取引集中は、全銀システム手形交換制度で行われます。全銀システムは、民間銀行間の内国為替の決済システムです。手形交換制度は、小切手や手形を銀行協会の運営する手形交換所で集中決済するシステムです。

 

民間銀行の預金の過不足は、日本銀行にある民間銀行の当座預金の振替で決済されます。この決済システムを日銀ネットと呼んでいます。

 

決済機構

 

 

 

2.決済システム

 

決済システムとは、決済の仕組み(コンピューター・システムや、契約に関する取り決めなど)のことです。このうち、お金の決済の仕組みのことを、資金決済システムといいます。資金決済システムには、日銀ネット、内国為替制度(全銀システム)、外国為替円決済制度(外国為替円決済システム)、手形交換制度があります。

 

決済機構

 

≪日銀ネット≫

 

日銀ネット(日本銀行金融ネットワークシステム)は、日本銀行と金融機関との間の資金決済を、オンラインで処理するネットワークシステムです。

 

民間銀行は、日本銀行に当座預金の口座をもっています。民間銀行の日々の過不足は、この預金口座を振り替えることで決済されます。この決済システムが日銀ネットです。

 

日本銀行本支店と参加金融機関は、日本銀行電算センターと通信回線で接続されていて、全銀システム・手形交換制度・外国為替円決済制度などで決済処理された交換尻の最終決済を行います。

 

◆日銀ネットの主な業務

 

日銀ネットでは、資金決済システムとして当座預金の決済(内国為替決済)や外国為替円決済制度に関する決済(外国為替決済)を行うほか、証券決済システムとして国債の決済(短期国債の売買取引、国債振替決済、国債登録、国債発行、国債資金同時受渡(国債DVP)など)を行っています。

 

決済機構

 

◆決済方法

 

これまで、日本銀行は、日銀ネットにおける決済の方法として、(1)時点ネット決済、(2)即時グロス決済(RTGS)、の2つの方法を行ってきました。しかし、実際には、資金効率のよい時点ネット決済が主流となり、即時グロス決済はあまり利用されていませんでした。

 

時点ネット決済とは、1日に数回設けられた決済時点ごとに、各金融機関の受取総額と支払総額を算出し、差額部分のみを振替決済する方法です。一方、即時グロス決済(RTGS)とは、日本銀行が、金融機関からの振替指図を1件ずつ即時に決済する方法です。

 

2001(平成13)年1月4日、日本銀行は時点ネット決済を廃止し、即時グロス決済に統一しました。これは、金融機関が破たんした場合に、即時グロス決済の方が金融システム全体に与える影響が小さいからです。

 

≪全銀システム(全国銀行データ通信システム)≫

 

全銀システムは、銀行相互間の内国為替業務を、通信回線を利用してオンライン処理するシステムです。すべての民間金融機関が加盟する国内最大のオンラインインターバンクシステムで、日本の決済システムの中核的な存在といえます。

 

全銀システムは、1968(昭和43)年に全国地方銀行で通信システムとして発足しました。その後、1973(昭和48)年4月に全銀システムに改められ、現在では、全国銀行・信用金庫・信用組合・シティバンク・農協などの金融機関に接続されています。
※2003(平成15)年6月時点で、1712の金融機関が参加しています。

 

全銀システムでは、東京銀行協会が運営主体となって、全国の金融機関相互の振込・送金・代金取立に関する決済額の計算や通知処理を行います。また、各金融機関別に集計された受払いの差額を、オンラインで日本銀行に送信しています。

 

≪外国為替円決済制度≫

 

外国為替円決済制度は、銀行間の外国為替取引から生じる円資金決済を集中的に行う制度で、1980(昭和55)年10月に発足しました。

 

外国為替円決済制度では、東京銀行協会が運営主体となって、外為売買・輸出入取引・コルレス先円勘定の振替・円建送金などにかかわる、参加銀行の支払指図書の交換を行っています。
2003(平成15)年6月時点で、参加銀行数は231行に上ります。

 

参加銀行は、支払指図書などを持ち寄って、受取額と支払額の差額を日本銀行の当座預金振替によって決済しています。東京銀行協会からの委託により、1989(平成1)年3月から支払指図データの授受と決済は、日銀ネットを利用してオンライン処理されています。

 

≪手形交換制度≫

 

手形交換制度は、ある地域内の多数の金融機関が、手形や小切手を手形交換所に毎日持ち寄って集中的に交換決済する制度です。

 

企業間の取引に使われた手形や小切手は、取引銀行に持ち込まれます。自行払いの手形や小切手は同一銀行内で決済しますが、他行払いの手形や小切手は手形交換制度を使って決済します。

 

決済機構

 

◆手形交換所

 

手形交換所は、各地の銀行協会で運営されています。銀行協会は、手形交換所や全銀システムの運営、金融や経済の調査・研究などを行うために、全国に設けられています。
2003(平成15)年6月時点で、全国に162の法務大臣指定の手形交換所があります。

 

手形交換所では、顧客間の債権債務を銀行間の債権債務に置き換えた上で相殺し、ネットの差額を決済します。この差額を交換尻といいます。交換尻は、日銀においてある民間銀行の当座預金口座を使って決済されます。

 

◆取引停止処分制度

 

手形交換所には、取引停止処分制度という制度があります。これは、半年間に2回の不渡届が提出されると、当座取引及び貸出取引が2年間禁止されるという制度です。銀行と取引ができなくなるわけですから、企業にとっては、事実上の倒産を意味します。

 

決済機構

 

 

スポンサーリンク

 

 

まとめ

内国為替
  銀行間の口座振替を使って送金や取立てを行う方法
日銀ネット
  民間銀行の預金の過不足を、日本銀行にある民間銀行の当座預金振替で決済するシステム
全銀システム
  民間銀行間の内国為替の決済システム
外国為替円決済制度
  銀行間の外国為替取引から生じる円資金決済を集中的に行う制度
手形交換制度
  小切手や手形を手形交換所で集中決済するシステム

 

 

問題と解答
  1. 企業間の支払いは、●●●や手形などを使用した、内国為替を利用して行います。●●為替は、銀行間の口座振替を使って送金や取立てを行う方法です。
  2. (答え)小切手、内国

  3. 民間銀行による取引集中は、●●システムと手形●●制度で行われています。手形交換制度は、小切手や手形を銀行協会の運営する手形●●所で集中決済するシステムです。
  4. (答え)全銀、交換、交換

  5. 民間銀行の預金の過不足は、●●銀行にある民間銀行の当座預金の振替で決済されます。この決済システムを、日銀●●●といいます。
  6. (答え)日本、ネット

  7. ●●システムは、銀行相互間の内国為替業務をオンライン処理するシステムです。すべての民間金融機関が加盟する国内最大のオン●●●インターバンクシステムです。
  8. (答え)全銀、ライン

  9. ●●支払いの手形や小切手は、同一銀行内で決済します。●●支払いの小切手や手形は、手形交換制度を使って決済します。
  10. (答え)自行、他行

  11. 手形交換所では、顧客間の債権債務を●●間の債権債務に置き換えた上で相殺し、ネットの差額が決済されます。この差額を、●●尻といいます。
  12. (答え)銀行、交換

  13. 取引●●●●制度は、半年間に2回の●●届が出されると、2年間、当座取引及び貸出取引が禁止されるという制度です。
  14. (答え)停止処分、不渡

  15. 日銀●●●は、日本銀行と金融機関との間の資金決済をオン●●●処理するネットワークシステムです。
  16. (答え)ネット、ライン

  17. 日銀ネットは、全銀システム、手形交換制度、外国●●円決済制度等で決済処理された●●尻の最終決済を行っています。
  18. (答え)為替、交換

  19. 外国為替●●●制度は、銀行間の外国為替取引から生じる円資金決済を集中的に行う制度です。参加銀行が支払指図書等を持ち寄り、受取額と支払額の●●を日本銀行の当座預金の振替により決済します。
  20. (答え)円決済、差額

金融大学TOP > 金融大学講座 > 金融取引入門講座 第5回 決済機構

 このエントリーをはてなブックマークに追加 

トップへ戻る