|
1.信用取引
信用取引とは、株式投資に必要な資金や株式を、証券会社から借りて行う株式取引のことをいいます。証券会社に一定の委託保証金(借りた資金や株式を返す保証に、証券会社に差し入れる担保)を差し入れるだけで、株式や金銭を持たずに株式売買を行うことができる取引です。
2.委託保証金
委託保証金は、証券会社が取引の安全を図ることを目的に、顧客から預かっておくお金です。 顧客は、借りた資金や株式を返す保証として、売買約定日の翌々日の正午までに、証券会社に委託保証金を差し入れます。
委託保証金は、約定価額の約30%以上と決められています。これを、委託保証金率といいます。つまり、自己資金の約3倍の取引が可能です。300万円の委託保証金があれば、1000万円の株取引を行うことができます。
信用取引で売買した銘柄の株価が変動して、担保(委託保証金)が不足すると、担保の追加が必要になります。これを追加保証金といい、一般的に「追い証(オイショウ)」と呼んでいます。
委託保証金は、現金のほかに、有価証券で代用することも可能です。これを代用有価証券といいます。有価証券には、その種類により、それぞれ現金換算率(掛け目)が定められています。
たとえば、国債であれば時価の95%というように計算します。
|
主な代用有価証券 |
現金換算率 |
|
国債 |
95%以下 |
|
政府保証債 |
90%以下 |
|
地方債・社債 |
85%以下 |
|
金融債 |
85%以下 |
|
上場銘柄 |
80%以下 |
|
店頭登録銘柄 |
80%以下 |
3.信用取引の決済
信用取引による株式の買いを空買い(からかい)、売りを空売り(からうり)と呼んでいます。
空買いとは、買付けに必要な資金を証券会社から借りて株を購入する方法です。期待どおりに値上がりすると、売却して利益が得られます。一方、空売りとは、売付けに必要な株券を証券会社から借りて売却する方法です。期待どおりに値下がりすると、買い戻して利益が得られます。
空買いされた株式と、空売りによる売却代金は、取引が決済されるまで証券会社が預かることになっています。顧客の手元には、何も引き渡されません。
|
信用取引 |
空買い |
証券会社から資金を借りて、株式を買う |
⇒ |
6ヶ月以内 に決済 |
|
空売り |
証券会社から株券を借りて、売る |
信用取引で借りた資金や株券は、予め定められた期限(通常6ヶ月以内)に返済(決済)する約束になっています。この決済は、「差金決済」と「実物決済」のどちらかの方法で行われます。
≪差金決済≫
差金決済とは、反対売買をして差額を受け渡す方法です。信用取引の決済は、通常、差金決済で行われます。空買いをしている場合には、担保となっている買付株券を売却します。空売りをしている場合には、担保となっている売却代金で株券を買い戻します。この反対売買により発生する差損益を、顧客と証券会社の間で授受する方法が差金決済です。
空買いしていた銘柄が値上がりすると、顧客は差金を証券会社から受取ります。値下がりすれば、差金を証券会社へ支払います。 空売りしていた銘柄が値下がりすると、顧客は差金を証券会社から受取ります。値上がりすれば、差金を証券会社へ支払います。
|
|
差金決済(通常6ヶ月以内) |
株価 |
差損益を授受 |
|
空 買 い |
担保の買付株券を 売却 |
値上がり |
受取り…顧客 支払い…証券会社 |
|
値下がり |
受取り…証券会社 支払い…顧客 |
|
空 売 り |
担保の売却代金で 株券を買い戻す |
値上がり |
受取り…証券会社 支払い…顧客 |
|
値下がり |
受取り…顧客 支払い…証券会社 |
≪実物決済≫
一方、実物決済とは、証券会社から借りていた資金や株式をそのまま返済する方法です。実物決済のことを、現引き(げんびき)、現渡し(げんわたし)と呼んでいます。
現引きとは、空買いのために借りた買付代金相当の現金を証券会社に渡して、担保となっている買付株券を受け取ることをいいます。
現渡しとは、空売りのために借りた株券と同種同量の株券を証券会社に渡して、担保となっている売付代金を受け取ることをいいます。
|
実物決済 |
現引き |
買付代金相当の現金を渡す 担保の買付株券を受け取る |
|
現渡し |
同種同量の株券を渡す 担保の売付代金を受け取る |
4.信用取引の利用法
信用取引は、投機目的の「空買い」や「空売り」の他に、保有している株式の値下がり損をカバーするために利用されています。
|
信用取引 |
投機目的 |
|
保有株式の値下がり損をカバー ⇒ つなぎ売り |
保有している株式の値下がりが予想される場合、直ちに株式を売却できれば損失を回避できるのですが、名義書換中などの理由で、その株式をすぐに売却できない場合があります。 こうした場合に、信用取引で空売りしておく方法を利用します。信用取引で生じる利益で、株式の値下がり損を補います。この空売りを、つなぎ売りまたは保険つなぎと呼んでいます。
予想通りに株式が値下がりした場合には、値下がりした価格で株式を買い戻せば損失を回避できます。逆に、株式が値上がりした場合には、保有している株式を現渡しすることができます。
5.信用取引市場の仕組み
信用取引において、証券会社は顧客の注文に応じて、買付代金や株式を顧客に提供しなければなりません。証券会社は、顧客に貸し出す買付資金や売付株式が足りなくなると、証券金融会社からこれらを調達しています。この証券会社と証券金融会社との間で行われる、資金や株式の貸し借りを貸借取引と呼んでいます。 ※証券金融会社とは、証券会社に対する、株式(有価証券)や資金の貸付を主要業務とする会社です。全国に、日本証券金融、大阪証券金融、中部証券金融の3社があります。
≪日歩≫
買いの注文(融資株数)が売りの注文(貸株数)を上回ると、買付資金が不足するため、証券会社は証券金融会社から融資を受けます。空買いの注文を出した投資家が、発生する金利を負担します。これを日歩(ひぶ)といいます。空売りをしている投資家は、株式の売付代金を空買い注文の融資に充てることができるので、買い方から日歩を受取れるのです。
日歩は、お金を借りる時の利息です。融資株数とは、買い手側の投資家が、売り手側の投資家から融資を受けて、買い付ける株数のことです。
≪逆日歩≫
逆に、売りの注文(貸株数)が買いの注文(融資株数)を上回ると、株不足となるため、証券会社は証券金融会社から品貸料を払って株を借ります。株式の品貸料のことを逆日歩(ぎゃくひぶ)といいます。空買いをしている投資家は、自分の保有する株式を空売り注文の貸し株に充てることができるので、売り方から逆日歩を受取れるのです。
貸株数とは、売り手側の投資家が、買い手側の投資家から株を借りて、市場で売り付ける株数のことです。
|
買方(融資株数)>売方(貸株数) |
資金不足 |
日歩(買い方が売り方に支払う金利) |
|
買方(融資株数)<売方(貸株数) |
株不足 |
逆日歩(売り方が買い方に支払う金利) |
買い方が売り方に日歩を支払うのか、売り方が買い方に逆日歩を支払うのかは、買い方と売り方の注文のどちらが多いかで決まります。注文の不足分を証券金融会社が穴埋めするからです。 証券金融会社と売り方が、買い方に融資をするときには、日歩が発生します。逆に、証券金融会社と買い方が、売り方に株を貸すときには、逆日歩が発生します。
6.信用取引残高の見方
信用取引残高の情報は、日本経済新聞等の情報紙に東京、大阪、名古屋の3市場残高が掲載されています。
3市場の買い残が急増すると日経平均株価は上昇し、買い残が減少すると日経平均株価は下落する傾向があります。これは、買い残の増加は、株式に値上がり期待を持つ人が多いことを反映するからです。 しかし、買い残は、6ヶ月以内に売り戻しの注文が入りますから、株価の値下げ要因になります。一般に、信用取引買い残が株式の時価総額の2%を超えると、上値が重くなり、株価を押し下げることが知られています。
3市場の取引残高は、売り残が896百万株で6411億円、買い残が2501百万株で1兆3810億円となっています(2002年5月31日現在)。
|
3市場取引残高(2002年5月31日現在)
|
|
売り残 |
買い残 |
|
株数(千株) |
896,238 |
2,501,540 |
|
金額(百万円) |
641,101 |
1,381,072 |
|
7.信用取引の種類
信用取引は、制度信用取引、一般信用取引、店頭登録銘柄の信用取引に分けられます。
制度信用取引は、証券取引所の規則により、銘柄、品貸料、弁済期限などが一律に決められている取引です。上場内国株券のうち、証券取引所が選定した上場銘柄を対象としています。これを制度信用銘柄と呼んでいます。
一般信用取引は、顧客と証券会社との間で、金利、品貸料、弁済期限などの取引条件を自由に決めることができる取引です。制度信用銘柄以外の上場銘柄を対象としています。これを一般信用銘柄と呼んでいます(ただし、上場廃止基準に該当する銘柄は対象外)。
店頭登録銘柄の信用取引は、金利、品貸料などの取引条件を自由に決めることができる取引です(ただし、弁済期限は一律)。日本証券業協会が選定した店頭登録銘柄を対象としています。
8.信用取引を利用する場合の注意点
信用取引を行うには、一定の知識と資力が必要です。信用取引は、投資した資金に比べて大きな利益が期待できる反面、価格の変動が予想と違った場合には損失も大きいからです。
また、空売りをしている場合、日歩(金利)の受取りが期待できますが、空売りの注文が増加して逆日歩になると、逆に金利を支払わなければなりません。この他、決済時に売買手数料や税金などの諸手数料がかかることを覚悟しておく必要があります。
参考 : 信用取引
|