金融大学(金融大学講座)

株式取引入門講座 第4回 投資利回り

1.投資利回り

 

投資の良し悪しは、投資利回りで決まります。株式の投資利回りには、総合利回りと配当利回りという2つの尺度があります。

 

投資利回り

 

 

 

2.総合利回り

 

総合利回りとは、年間の総合収益を株価(投資額)で割った比率です。1年間に投資額に対して何%の収益を生み出したかを示しています。

 

投資利回り

 

投資額は、株式の買付け価格です。総合利益は、配当だけではなく、キャピタルゲインのほかに無償交付額等を加味したものをいいます。

 

総合利回りの計算

 

(問題)
ある銘柄の株式の購入価格が10円、1年後の売却価格が11円、配当がなかった場合の総合利益を計算しなさい。

 

(答え)
株式を10円で購入して1年後に11円で売却すると、1円の儲けが生まれます。配当はなかったとすると、計算は、1÷10=0.10となります。利率は%表示なので、利率0.1を100倍して10%と表示します。

 

(問題)
上記の例で、配当を1円受取った場合の総合利益を計算しなさい。

 

(答え)
配当を1円受取った場合には、儲けは合計2円となります。計算は、2÷10=0.20で20%となります。

 

総合利回りの計算で、もう1つ重要なことがあります。利回りは、年率で表示されるという点です。年率というのは、1年あたりの割合という意味です。したがって、総合利回りの計算には、総合利益を1年あたりに直す計算が必要です。

 

5年間に5円の配当を受取ったのであれば、1年あたり、5円÷5=1円の配当を受取ったとして計算します。

 

総合利回り(1年あたり)の計算

 

(問題)
投資金額100円、売却価格110円、5年間で5円の配当をもらっていた場合の総合利回りを計算しなさい。

 

(答え)
5年間の総合収益は、15円{(110-100)+5=15}となります。
これを1年あたりに直すと、15÷5=3円になります。
したがって、総合利回りは、3÷100=0.03で、3%となります。

 

(問題)
株式を3ヶ月間だけ所有した場合、投資金額100円、3ヶ月後の売却価格100円、その間に1円の配当をもらった場合の総合利回りを計算しなさい。

 

(答え)
総合利益3ヶ月分を4倍して、1年分に引き直して計算します。
総合利回りは、1÷100=0.01(1%)を、4倍します。1%×12÷3=4%となります。

 

所有期間が1ヶ月であれば、12%(1%×12÷1=12%)と計算します。
利回りは、見かけ上大きくなっています。

 

総合利益を年率に直す計算で、3ヶ月分の利益を4倍するかわりに、0.25で割ってもかまいません。1年を1と考えると3ヶ月は4分の1で0.25ですから、答えは同じです。

 

配当金は、株式の所有期間に関係なく、決算日の株主に対して支払われます。 決算日の5日前までに株式を買って、名義書き換えを済ませれば、株主名簿に名前が記載されて配当がもらえます。

 

そこで、権利付き最終日に株を買って、配当をもらいすぐに売却すると、総合利回りは見かけ上、高くなります。これを狙って投資する方法がありますが、権利落ち後、株価が下がりやすい点を考慮しておくことが大切です。

 

 

 

3.投資の目安

 

投資収益率(総合利回り)は、株式を売却して取引を終えなければ、計算できません。これから投資をはじめる際の目安としては、不向きです。そこで、投資の目安として計算可能な、様々な比率が使われています。

 

 

 

4.配当利回り

 

配当利回り=配当÷株価

 

「配当利回り」とは、年間の配当金を株価で割った比率です。株式自体の値上がりあるいは、値下がりによる損益を無視して計算した比率です。

 

配当利回りは、別名、単純利回りと呼んでいます。単に利回りという場合、配当利回りを指していることが多いようです。日本の株式の配当利回りは一般に低いため、あまり使っていないのが現状です。

 

 

 

5.株価収益率(PER)

 

株価収益率=株価÷1株あたり利益(年間税引き後利益)

 

「株価収益率」は、株価を企業の1株あたり利益で割った比率です。株価が企業の利益の何倍であるかを算出して、株価が割安か割高であるかを判断しようとする指標です。

 

1株利益は、1年間の税引き後利益を発行済み株式数で割った数字です。 この1株利益の計算には、通常、今期の予想利益を使います。

 

(問題)
株価が10000円、1株利益が500円の場合の、株価収益率を計算しなさい。

 

(答え)
PER=株価÷1株利益=10000÷500=20 となり、株価収益率(PER)は、20倍と計算されます。

 

企業の業績は、株価の重要な決定要因です。業績は、利益に表れます。

 

PERが高ければ、利益に対して株価が高く買われていることを示すので、利益に対して割高と判断されます。逆に、PERが低ければ、利益に対して株価が低いことを示すので、利益に対して割安と判断されます。

 

PERの低い銘柄の株価が、すぐに上がるというわけではありません。PERが何倍であれば適性であるといった基準もありません。 PERは、業界水準や同業他社との比較により、割安・割高を判断しています。

 

 

 

6.株価純資産倍率(PBR)

 

PBR=株価÷1株純資産

 

「株価純資産倍率」は、株価を1株あたり純資産価値で割ったものをいいます。1株あたり純資産の何倍まで買われているのかを見る指標です。

 

純資産とは、資本金、資本準備金、利益準備金などの内部留保の合計額です。純資産は、総資産から負債を差し引いたもので、株主持分を表しています。会社が解散する場合に、資産を処分して債務を返済した後に残るのが純資産であるため、会社解散時の解散価値であると考えられます。

 

1株あたり純資産とは、純資産を発行済み株数で割ったものです。通常、株価純資産倍率は、1倍を超えています。株価純資産倍率が2倍であれば、会社の解散時には、株式購入資金の半分しか戻ってこないことになります。株価純資産倍率が低いほど割安、高いほど割高と判断します。

 

 

 

7.実質株価純資産倍率(Qレシオ)

 

Qレシオ=株価÷1株あたり(純資産+含み資産)

 

「実質株価純資産倍率」は、株価を1株あたり実質純資産で割ったものをいいます。Qレシオは、株価純資産倍率(PBR)の計算に用いる純資産に、含み資産を加えて計算する指標です。

 

実質純資産は、純資産に含み資産を加えたものです。純資産は、貸借対照表に帳簿価格で表されています。土地などの時価は、購入時の簿価(帳簿価格)から大きく離れています。この時価と簿価の格差を「含み」と呼んでいます。

 

実際の純資産価値に注目した点で、Qレシオは、PBRより優れています。しかし、企業がどれくらいの含み益を持っているのかを正確に知る手立てはなく、計算には推定値を使っています。そのため、指標としての信頼性に欠けるのが弱点です。

 

また、バブル期には、Qレシオが1を下回る企業が出てきました。これは、異常に値上がりした地価を基に計算したために起こった現象です。Qレシオを使う場合には、含み益の計算に問題がないか等に十分な検討を加えることが大切です。

 

参考 : 「利率」と「利回り」という言葉の違い

 

「利率」は、額面金額に対する利息の割合をいいます。「クーポンレート」、「配当率」、「預金金利」の表示に使います。

 

一方、「利回り」は、投資金額に対する収入の割合です。債券や株式のように元本が確定していない金融商品の収益性の表示に使います。

 

債券や株式では、額面金額と発行価格の差額をキャピタルゲインキャピタルロスと呼んでいます。

 

 

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まとめ

総合利回り
  =年間総合利回り÷株価
  ={(配当+無償交付+値上がり益)÷所有期間}÷株価
配当利回り
  =配当÷株価
株価収益率
  =株価÷1株あたり利益(年間税引き後利益)
株価純資産倍率(PBR)
  =株価÷1株純資産
実質株価純資産倍率(Qレシオ)
  =株価÷1株あたり(純資産+含み資産)

 

 

問題と解答
  1. ●●利回りとは、年間の総合収益を●●(投資額)で割った比率です。利回りは●●で表示されるので、総合利回りの計算には、総合利益を 1年あたりになおす必要があります。
  2. (答え)総合、株価、年率

  3. 株式の配当金は、所有期間に関係なく、決算日の●●に対して支払われます。決算日の●●前までに株式を買って、名義書き換えを済ませれば、株主名簿に名前が記載されて配当がもらえます。
  4. (答え)株主、5日

  5. ●●利回りとは、年間の配当金を株価で割った比率です。株式自体の値上がりあるいは、値下がりによる損益を無視して計算した比率で、別名、●●利回りと呼んでいます。
  6. (答え)配当、単純

  7. ●●収益率(PER)は、株価を企業の1株あたり利益で割った比率です。株価収益率は、株価が企業の利益の何倍であるかを算出して、●●が割安か割高かを判断する指標です。
  8. (答え)株価、株価

  9. 企業の●●は、株価の重要な決定要因です。PERが高ければ、利益に対して株価は割高と判断されます。逆に、PERが低ければ、利益に対して株価は●●であると判断されます。
  10. (答え)業績、割安

  11. 株価●●●倍率は、株価を1株あたり純資産価値で割ったものです。 通常、株価純資産倍率は●倍を超えています。株価純資産倍率が低いほど割安、高いほど●●と判断されます。
  12. (答え)純資産、1、割高

  13. ●●●とは、資本金、資本準備金、利益準備金などの内部保留の合計額です。純資産は、総資産から負債を差し引いたもので、株主持分を表しています。会社が解散する場合、資産を処分して債務を返済後に残るのが●●●で、会社解散時の解散価値です。
  14. (答え)純資産、純資産

  15. 実質●●純資産倍率(Qレシオ)は、株価を1株あたり実質純資産で割ったものです。実質純資産は、●●●に含み資産を加えたものです。
  16. (答え)株価、純資産

  17. Q●●●は、株価純資産倍率(PBR)の計算に用いる●●●に含み資産を加えて計算する指標です。
  18. (答え)レシオ、純資産

  19. ●●は、額面金額に対する利息の割合で、クーポンレート、配当率、預金金利などの表示に使います。●●●は、投資金額に対する収入の割合で、債券や株式のように、投資元本が確定していない金融商品の収益性の表示に使います。
  20. (答え)利率、利回り

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