|
1.デュレーションとは何か
≪平均回収期間≫
デュレーションとは、債券に投資された資金の平均回収期間のことをいいます。
利付債券に投資されたお金は、クーポンレートと満期日に支払われる償還額という形で回収されます。この複数のキャッシュフローを一本にまとめたと考えた場合の債券の残存期間がデュレーションです。
例えば、額面100円、残存期間5年、クーポンレート5%(年1回)、最終利回り3%の債券のデュレーションは、4.57年となります。
割引債は、クーポンの支払いがないため、残存期間は、デュレーションと一致します。残存期間5年の割引債のデュレーションは、5年です。
≪価格弾力性≫
デュレーションは、債券の価格弾力性としての意味をもっています。価格弾力性とは、金利の変化に対する債券価格の変化の割合のことをいいます。
例えば、金利が3%動いた時に債券価格が6%動いたとすると、価格弾力性は、2(0.06÷0.03=2)となります。
価格弾力性を数式にすると、価格Pの変化率を金利(1+r)の変化率で割ったものとして書くことができます。
Δは、ほんの少しの変化を表わす記号でデルタと読みます。つまり、ほんの少し変化した時の割合という意味です。
 |
(証明は、脚注を参考) |
≪修正デュレーション≫
デュレーションが価格弾力性であることを利用して、利回りの変化に対する債券価格の変化を計算してみます。
例えば、利回りが1%下がったときに、債券価格がいくら上がるかを計算することができます。
債券価格105.65、デュレーション2.86年、利回り3%であれば、債券価格は2.93円上昇します。
|
Δ債券価格=105.65×-2.86÷(1+0.03)×-0.01=2.93
=P×(-D)÷(1+r)×-0.01
(P:債券価格、D:デュレーション、利回り:r) この計算式でDにマイナスの符号がついていることに注意します。 |
この利回りが1%変化したときの債券の価格変化を、金額デュレーションとか、ダラーデュレーションと呼んでいます。
|
呼 び 方 |
意 味 |
|
金額デュレーション (ダラーデュレーション)
|
利回り1%の変化に伴う 債券の価格変化金額
|
この計算には、デュレーションを(1+最終利回り)で割ったものを使います。これを修正デュレーションと呼んでいます。
|
修正デュレーション=デュレーション÷(1+利回り) |
デュレーションは、投資資金の平均回収期間という意味と、金利が動いたときに債券価格がどのように動くかという価格弾力性という意味をもっています。デュレーションのことを、修正デュレーションと区別して、マコーレ・デュレーションと呼ぶことにします。
|
デュレーションの意味 |
|
マコーレ・デュレーション
|
平均回収期間
|
|
価格弾力性
|
2.デュレーションの計算法
デュレーションは、債券の各キャッシュフロー(クーポン金額や償還元本)の現在価値に回収期間(年数)を掛けて、債券価格で割ったものです。債券価格というのは、各キャッシュフローの現在価値の合計です。
例えば、額面100円、残存期間3年、クーポンレート5%(年1回)、最終利回り3%の債券のデュレーションは、次の計算式により、2.86年と計算されます。
これを文字式にすると次のようにまとめられます。
計算式のDは、デュレーションの略です。t
は、何年目かを示します。r
は、最終利回りです。Σは、合計するという意味で、大文字のギリシャ文字でシグマと読みます。
3.デュレーションと債券価格
利付債の将来価格は、売却時点の債券価格、クーポン収入、クーポンの再投資収入の合計で決まります。
|
利付債の将来価格 |
|
売却時点の債券価格
|
合計 |
|
クーポン収入
|
|
クーポンの再投資収入
|
債券価格とは、債券の将来価値を現在価値に引き直したものと考えられます。債券価格には、金利が上がれば債券価格が下がり、金利が下がれば債券価格が上がるという関係があります。しかし、債券の将来価値は、現在の債券価格と同じ動きをするわけではありません。
割引債の場合には、金利が上がれば債券の将来価値が下がり、金利が下がれば債券の将来価値は上がります。しかし、利付債の場合には、金利が上がると債券価格は下がりますが、クーポンレートの再投資収入は増えることになります。
価格変動による損益効果と、クーポンレートの再投資価値の増減効果は互いに打ち消しあいます。
|
|
金利上昇
|
金利下降
|
|
|
|
債券価格(現在価値)
|
下がる
|
上がる
|
|
|
|
割引債の将来価値
|
下がる
|
上がる
|
|
|
|
利付債の将来価値 クーポンレートの再投資収入
|
下がる 増える
|
上がる 減る
|
⇒
|
増減効果 打ち消しあう
|
その結果、投資期間の最初の頃(短期的)には、価格の動きによる効果がクーポンの再投資効果を上回ります。そのため、金利が上がれば債券の将来価値は下落し、金利が下がれば債券の将来価値は上がります。
しかし、投資期間の最後の頃(長期的)には、クーポンの再投資効果が価格の動きによる効果を上回ります。そのため、金利が上がれば債券価値も上がり、逆に金利が下がれば債券価値も下がります。
|
投資期間
|
金利変動の効果
|
金利上昇
|
金利下降
|
|
短期
|
価格効果>再投資効果
|
将来価値下がる
|
将来価値上がる
|
|
デュレーション
|
価格効果=再投資効果
|
将来価値の変動なし |
|
長期
|
価格効果<再投資効果
|
将来価値上がる
|
将来価値下がる
|
ここに、残存期間3年、クーポン5%、利回り3%の債券があるとします。デュレーションは、2.86年です。この債券を、1年目、2年目、デュレーション、満期日に売却した場合の将来価値と、利回りが1%上昇した場合と、低下した場合の将来価値を計算して一覧表にすると、次のようになります。
債券:残存期間3年、クーポン5%、デュレーション2.86
|
|
売却時期・利回りによる将来価値の変動
|
|
利回り |
1年目
|
2年目
|
デュレーション
|
満期日
|
|
4%に上昇↑
|
106.89
|
111.16
|
114.99
|
115.61
|
|
3%
|
108.83
|
112.09
|
114.99
|
115.45
|
|
2%に低下↓
|
110.82
|
113.04
|
114.99
|
115.30
|
ここで1年目の将来価値というのは、1年目のクーポンを受取って債券を売却した場合の債券価値という意味です。この表中の将来価値は、次の計算式で計算したものです。
この表から、デュレーション2.86年目の債券価値は、金利が4%に上がっても、3%下がっても、114.99円で変わらないということがわかります。価格変動による効果とクーポンの再投資効果が等しい債券の保有年数がデュレーションです。つまり、デュレーションは、金利変動のリスクを受けないで債券を売買できるポイントです。
金利が上がる場合、1年目で売却すると、106.89円でしか売れません。利回り3%の時の108.83円から比べると、損をしてしまいます。逆に、満期まで待てば、一番高い価格115.61円で売れることがわかります。
つまり、金利上昇が予想されるのであれば、デュレーションより長く保有して売却した方が収益を上げられることになります。逆に、金利低下が予想されるのであれば、デュレーションの手前で売却した方が収益を上げられることになります。
|
金利上昇予想
|
⇒
|
デュレーションより長く保有して売却
|
|
金利低下予想
|
⇒
|
デュレーションの手前で売却
|
4.デュレーションの特性
債券のデュレーションは、残存期間、クーポン、利回りなどの要素において、次のような特性があります。
≪残存期間≫
債券の残存期間が長い(短い)ほど、デュレーションは大きく(小さく)なります。デュレーションは平均回収期間ですから、残存期間が長くなると回収期間も長くなります。
例えば、額面100円、クーポンレート5%、利回り3%のデュレーションは、残存期間3年では2.86年ですが、残存期間5年になると4.57年になります。
≪クーポン≫
クーポンレートが高い(低い)ほど、デュレーションは小さく(大きく)なります。クーポンレートが高いと、早期に回収される資金が増えるので、デュレーションは小さくなります。逆に、クーポンレートがゼロならば、デュレーションは大きくなって債券の残存年数と一致します。
例えば、額面100円、残存期間3年、利回り3%の利付債の場合、クーポンレート0%ではデュレーションは3年、クーポンレート5%では2.86年、クーポンレート10%では2.76年と小さくなります。
≪利回り≫
利回り水準が高い(低い)ほど、デュレーションは小さく(大きく)なります。利回り水準が高いと再投資効果も大きくなるので、デュレーションは小さくなります。利回り水準が低いと再投資効果も小さくなるので、デュレーションは大きくなります。
例えば、額面100円、残存期間3年、クーポンレート5%の利付債の場合、利回りが3%の場合のデュレーションは2.86年ですが、利回りが10%になるとデュレーションは2.85年と小さくなります。
|
デュレーションの特性 |
|
残存期間
|
短い
|
長い
|
|
クーポン
|
高い (早期にお金が回収される)
|
低い (お金の回収に時間がかかる)
|
|
利回り
|
高い(価格変動率が小さい)
|
低い(価格変動率が大きい)
|
|
↓ ↓
|
|
デュレーション
|
小さい
|
大きい
|
5.デュレーションの利用法
デュレーションは、債券やポートフォリオのリスク管理に利用されます。デュレーションは、金利が変動しても債券価値が影響を受けない期間ですから、ポートフォリオのデュレーションを投資期間に合わせると金利リスクが回避できます。これをイミュニゼーション(免疫化)戦略と呼んでいます。
一方、積極的に金利リスクをとる戦略にデュレーションを利用する方法もあります。
金利が低下すると予想する場合には、ポートフォリオの投資期間に対してデュレーションを大きくします。逆に金利が上昇すると予想する場合には、ポートフォリオの投資期間に対してデュレーションを小さくします。
投資期間がデュレーションより短い場合、価格変動の効果が再投資効果より大きくなるので、金利が低下すれば、ポートフォリオ価値を上昇させることができます。逆に、投資期間がデュレーションより長い場合、再投資効果が価格変動の効果より大きくなるので、金利が上昇すれば、ポートフォリオ価値を上昇させることができます。
|
消極的戦略
|
投資期間=デュレーション
|
金利リスクなし
|
|
積極的戦略
|
投資期間<デュレーション(大きくする)
|
金利低下予想
|
|
投資期間>デュレーション(小さくする)
|
金利上昇予想
|
◆参考
|
債券価格を金利で微分すると、 |
|

|
|

|
とおくと、 |

|
となります。 |
◆脚注
デュレーションが債券の価格弾力性であることの証明
|