|
1.保険とは何か
保険とは、事故や災害などの偶発的な事態により被る、経済的損失を保証する制度です。あらかじめ、保険加入者が集まって保険料を分担拠出しておき、万が一の支払いに備えます。
保険は、大きく生命保険と損害保険の2つに分けられます。生命保険は、人が死亡した時に一定の金額を支払うことを保証します。損害保険は、火災や交通事故などの予測できない事故により生じる損害を保証します。
|
生命保険 |
人が死亡したときに一定の金額を支払う
|
|
損害保険 |
予測できない事故により生じる損害を保証
|
保険会社には、加入者から預かった保険料が集まります。日本の生命保険の契約金額は世界各国と比べてとても多く、大口の運用資金となっています。保険会社は、この大口の運用資金を、企業への貸付けや株式などの金融市場で運用しています。
保険会社の運用資金は大口であるため、金融市場に大きな影響力を持っています。こうした株式や債券に大口の運用を行う企業のことを、機関投資家と呼んでいます。保険会社は、機関投資家の代表格です。
2.保険会社の種類
保険は、大きく生命保険と損害保険の2つに分けられます。
≪生命保険≫
生命保険は、人の生死(死亡・病気・ケガなど)を対象に、一定金額を支払うことを保証する業務です。
◆生命保険の種類
生命保険には、被保険者が死亡した時に保険金を支払う死亡保険、被保険者が一定期間生存していることを条件に保険金を支払う生存保険、この両者を併用した養老保険、被保険者が病気入院した場合に支払われる医療保険などがあります。
|
生命保険
↓
長期金融機関
の性格 |
死亡保険 |
被保険者の死亡時 |
|
生存保険 |
被保険者が一定期間生存していることが条件 |
|
養老保険 |
死亡保険と生存保険を併用したもの |
|
医療保険 |
被保険者の病気入院時 |
≪損害保険≫
損害保険は、予測不能の突発事故(火災・交通事故など)を対象に、一定金額を支払うことを保証する業務です。
◆損害保険の種類
損害保険には、火災保険、傷害保険、自動車保険、海上保険、運送保険、賠償責任保険、盗難保険などがあります。
3.機関投資家の性格
生命保険会社は長期金融機関、損害保険会社は短期金融機関の性格を持っています。
≪生命保険の性格≫
生命保険は、支払いの発生時期をある程度予測することができます。
保険加入者から集めた保険料は契約期間も長く、長期的かつ安定的な運用資金として利用できます。そのため生命保険会社では、企業への貸付けや株式投資などで資産を運用しています。
したがって、生命保険会社は、長期金融機関としての性格を備えているといえます。
≪損害保険の性格≫
損害保険は、支払いの発生時期を予測できません。
契約も1年程度の短期契約が中心であるため、短期的かつ流動的な資金となります。保険会社は、ある程度の資金をいつでも支払えるように、常に準備しておく必要があります。そのため、預かった保険料を短期で運用しています。
したがって、損害保険会社は、短期金融機関としての性格を備えているといえます。
|
生命保険会社 |
長期の資金運用者 |
|
損害保険会社 |
短期の資金運用者 |
4.保険会社の破たん
バブル崩壊後、経営が悪化した保険会社が増えました。不良債権に加えて逆ザヤの契約が増えたためです。低金利や株式市場の低迷により、バブル時代に契約した高い予定利率に実際の運用利率が追いつかなくなったのが逆ザヤ契約です。
保険会社の経営が破綻した場合に備えて、1996年に保険契約者保護基金制度を導入しました。しかし、保険契約者保護基金の資金は、1997年4月の日産生命の破綻で枯渇してしまいました。また、この制度は、破綻保険会社の業務を引き継ぐ救済保険会社が現れないと機能しないという問題がありました。そこで、保険業法を改正して、救済保険会社が現れない場合でも対応できる制度として、1998年12月に保険契約者保護機構を創設しました。
保険契約者保護機構では、破たんした保険会社の保険契約を引き継ぐ救済保険会社に資金援助を行います。また、救済保険会社が現れない場合は、機構または機構の子会社が保険契約をいったん引き継ぎ、救済保険会社を探して再移転することになります。
新制度では、保険金ではなく保険料を基準にすることにしました。補償は原則として責任準備金の90%であるため、保険金が減額されてしまう場合があります。責任準備金とは、保険会社が契約者に保険金などを支払うために、保険料や運用収益などを積み立てたものをいいます。また、救済保険会社に引き継ぐときに、予定利率が引き下げられる可能性もあります。保険金が減額されることも覚悟しなければならなくなりました。
保険契約者保護機構には、生命保険契約者保護機構と損害保険契約者保護機構の2つがあり、すべての保険会社が加入しています。
※2003(平成15)年4月1日現在、生命保険契約者保護機構の加入社数は42社、損害保険契約者保護機構の加入社数は46社となっています。
|
保険契約者保護機構 (全保険会社が加入) |
生命保険契約者保護機構 |
|
損害保険契約者保護機構 |
参考 :
予定利率 保険契約者保護機構 5.保険業の自由化
≪金融自由化≫
保険業界にも金融自由化が始まりました。1996(平成8)年4月に改正した新保険業法では、子会社を通した生命保険と損害保険の相互参入が自由化されました。また、保険商品の自由化や保険ブローカー(保険中立人)制度の導入なども取り入れられています。
※保険ブローカーとは、保険会社には所属せず、保険の契約者と保険会社の間に入って契約の仲介を行う業者のことをいいます。
1998(平成10)年7月には、保険料の料率が自由化されました。保険業界は本格的な競争時代に入り、銀行と同様にリスク管理に対する意識の強化が求められています。
|
金融自由化
生命保険と損害保険の相互参入
保険商品の自由化
保険料の料率が自由化
|
⇒ |
競争激化
リスク管理の強化が鍵! |
≪組織変更への動き≫
金融自由化により保険業界の競争が激化し、合併・再編への動きが活発化しています。また、保険会社の形態を相互会社から株式会社へ移行する動きが目立っています。
◆株式会社化(相互会社から株式会社へ)
株式会社化とは、保険会社が相互会社から株式会社へと、会社形態を転換することをいいます。
相互会社は、株主による出資金ではなく、保険契約者(社員と呼ぶ)の支払う保険料などで運営する非営利の組織で、保険会社だけに設立が認められています。外資系保険会社や損害保険会社はほとんどが株式会社ですが、日本生命や第一生命などの大手生命保険会社は相互会社となっています。
株式会社に転換するにはかなりの手間と費用が掛かりますが、(1)会社経営の透明性が高い、(2)外部から資金調達しやすい、(3)株式交換比率が算出できるため合併が容易である、などの利点があります。また、保険業の自由化に伴い競争が激化したことから、自由な企業戦略を立てやすい株式会社に転換する動きが見られます。
株式会社化すると、保険契約者(社員)には、予定利率や保険商品の種類、契約金額などから算定された「保険会社への貢献度」に応じて、株式が割り当てられます。ただし、貢献度が低い場合には、株式の割り当てがない場合もあります。
2004(平成16)年4月現在、朝日生命、住友生命、第一生命、日本生命、富国生命、明治安田生命は相互会社の形態をとっています。
≪参考
:
生命保険会社の破たん≫
◆日産生命(1997年4月25日破たん)
保険契約は、1997年10月1日にあおば生命に移転しました。1996年に導入された保険契約保護基金の資金は、日産生命の破たんで枯渇してしまいました。
◆東邦生命(1999年6月4日破たん)
保険契約は、2000年3月1日にGEエジソン生命に移転しました。生命保険契約者保護機構では、破たん処理のため、GEエジソン生命に3750億円を拠出しています。
◆第百生命(2000年5月31日破たん)
保険契約は、2001年4月2日にマニュライフ・センチュリー生命(現 マニュライフ生命)に移転しました。生命保険契約者保護機構では、破たん処理のため、マニュライフ・センチュリー生命に1450億円を拠出しています。
※マニュライフ・センチュリー生命は、2001年9月にマニュライフ生命保険株式会社に社名変更しました。
◆大正生命(2000年8月28日破たん)
筆頭株主クレアモントキャピタルホールディングの設立者に85億円を詐取されたことが破たんの原因とみられています。
2001年2月、大和生命保険はソフトバンク・ファイナンスと共同出資して、あざみ生命保険株式会社を設立しました。
2001年3月31日に、大正生命の保険契約はあざみ生命に移転されました。
※2002年4月1日、あざみ生命は大和生命と合併し、大和生命保険株式会社となりました。
◆千代田生命(2000年10月9日破たん)
バブル時代に積極的に行った融資により多額の不良債権を抱えて経営が悪化し、破たんとなりました。負債総額は2兆9366億円です。
アメリカン・インタ−ナショナル・グル−プ(AIG)とスポンサ−契約し、AIGスター生命保険株式会社に社名を変えて組織変更を行い、2001年4月20日に業務を開始しました。
◆協栄生命(2000年10月20日破たん)
千代田生命が破たんしたことで、契約者に動揺が広がり、解約数が増えたことが経営破たんの原因となりました。負債総額は4兆5297億円です。
米国プルデンシャル社とスポンサー契約し、ジブラルタ生命保険株式会社に社名を変えて組織変更を行い、2001年4月3日に業務を再開しました。生命保険契約者保護機構や国からの資金援助を求めない、生保の破たん処理としてははじめての計画です。プルデンシャル社が、1500億円以上の資金を拠出しました。
◆東京生命(2001年3月23日破たん)
米国GEキャピタルとの提携交渉決裂と大和銀行の支援撤回により、破たんとなりました。逆ざやによる損失、株価低迷、相次ぐ生保の破たんによる解約数増加などが破たんの原因です。負債総額は9802億円です。
太陽生命及び大同生命とスポンサー契約し、社名を「T&Dフィナンシャル生命保険株式会社」に変更して、2001年10月22日に業務を開始しました。
≪参考
:
損害保険会社の破たん≫
◆第一火災海上(2000年5月1日破たん)
2001年4月1日、保険契約は損害保険契約者保護機構に移転しました。保護機構の負担額は400億円になります。
◆大成火災海上(2001年11月22日破たん)
米同時テロの影響による保険金支払で、398億円の債務超過に陥る見通しとなり、更生特例法(会社更正法に相当)を申請しました。負債総額は4131億円です。
大成火災海上は、2001年11月30日に、安田火災海上、日産火災海上とスポンサー契約を締結しました。
安田火災と日産火災は2002年7月1日に合併して「損害保険ジャパン」となり、2002年12月1日に大成火災と合併しました。
※負債総額は、帝国データバンク調べによるものです。
|